睡眠障害とは睡眠に何らかの問題がある状態のことです。睡眠は心身の回復、記憶の定着、免疫機能を強化する働きがあります。睡眠が障害されると日中の活動へ支障をきたし、心身の影響に影響します。また、生活習慣病やうつ病のリスクも高くなります。特に、高齢者では睡眠の質が低下し、不眠などの睡眠障害がみられます。その為、適切な治療を早期にすることが大切となります。
睡眠障害の種類と原因
日常にみられやすいとされる不眠症・過眠症・概日リズム睡眠覚醒障害・睡眠呼吸障害・睡眠時随伴症の事について書いていこうと思います。
不眠症は、入眠困難・中途覚醒・早朝覚醒・熟睡障害によって、その人にとって必要な睡眠時間が十分に取れていないことや睡眠の質が低下することで日中の疲労、集中力の低下、不調、気分変調などが起こり、生活に支障をきたす状態になります。不眠症は睡眠障害の内最も多いと言われています。
●眠れないかもしれないという慢性的な不安や緊張などのストレス
●抗パーキンソン病薬、降圧剤、副腎皮質ステロイド、インターフェロンなどの薬剤の副作用
●慢性の痛み、かゆみ(アトピー性皮膚炎など)、呼吸困難(気管支喘息など)、前立腺肥大、膀胱炎などの身体疾患
○過眠症
過眠症とは、夜に十分な睡眠をとっているのに日中に過度の眠気によって仕事や学習などに支障をきたすこと。
体内時計が発する概日リズムによって夜に眠り、日中に活動するという生活リズムが出来ていますが、概日リズムにズレが生じることで、夜間の十分な睡眠がとれなくなる障害です。
概日リズム睡眠覚醒障害の要因としては、夜間に仕事を行う交代勤務で体内時計と合わない時間に睡眠をとることや、夜型の生活で睡眠時間帯が後ろにずれることがあります。高齢者の場合は、夕方になると眠気が生じ、早朝2~3時に目覚めて入眠できない睡眠相前進型が加齢とともに多くなります。
睡眠時無呼吸症候群では睡眠時に舌根が喉の方に落ち込んで気道がふさがれていびきによる低呼吸や呼吸が停止する無呼吸がみられます。低呼吸や無呼吸になると血液中の酸素濃度が低下して目が覚め、睡眠が途切れ途切れになることで熟睡感が得られなくなります。
肥満や首周りに脂肪が多い事、首が短い、上気道が狭い、下顎が小さいなどの要因があると睡眠時に気道が閉塞しやすくなります。
○睡眠時随伴症
睡眠中に起こる心身機能異常です。高齢者にみられる睡眠時随伴症にはレム睡眠行動障害があります。
レム睡眠行動障害
レム睡眠時は夢を見ますが身体は休んでいる状態で骨格筋が弛緩しているので体の動きはありません。レム睡眠行動障害では夢の内容に一致する異常行動や大きな寝言が見られます。家具を壊すことや、一緒に寝ている家族に怪我を負わすこともあります。これは、レビー小体型認知症、パーキンソン病、多系統萎縮症などの神経変形疾患の前駆症状として見られることがあります。
睡眠障害の治療法
睡眠障害の治療では生活習慣を整えること、睡眠環境を整えることが大切です。毎日の起床・就寝時刻を一定にして生活リズムを整え、朝起きたら朝日を浴びましょう。日中は適度に運動をして活動的に過ごし、寝る前のカフェイン・喫煙・アルコールは控えます。夜はぬるま湯のお風呂に浸かり身体を温めます。就寝する部屋は快適な温度・湿度を保ち、できるだけ外の音は遮断して照明も不安にならない程度に暗くしましょう。高齢者は加齢とともに睡眠時間は少なくなってきますので、寝床にいる時間が長くなりすぎないようにしましょう。
生活習慣や環境を整えても改善しない場合は、睡眠薬などの薬物治療が行われます。