今回は肩甲骨の可動域を拡げることの重要さについてお話していきます。
肩関節の構造
肩関節には、肩甲上腕関節・肩鎖関節・胸鎖関節・肩峰下関節・肩甲胸郭関節。烏口鎖骨間関節の6つの関節から構成されており、その中から2つの重要な関節について説明します。
・肩甲上腕関節
肩甲骨と上腕骨をつないでいる肩関節で、この関節は360度回せるくらい可動域が大きい関節です。関節窩という浅いくぼみに上腕骨頭と呼ばれるボールみたいな形の骨が収まります。ボールみたいな球状の形をしており、くぼみの受け皿が浅いということもあるので動ける範囲が広くなっています。ただ、くぼみが浅いという事はそこに入る球状の骨は不安定になりがちです。負荷のかかり方によって場所がずれてしまう、すなわち外れやすい(脱臼)という特徴をもっています。
しかし、人間の構造は良くできているものであり、そうそう外れないように様々な工夫をしています。これを安定化させているのが関節唇、靭帯を含む関節包、上腕二頭筋長頭腱、ローテーターカフといわれるインナーマッスルが働いてます。
①関節唇
関節のくぼみの全体の周りを取り巻いている物であって、浅くくぼんでいる場所を深くすることで骨頭との適合を良くする繊維軟骨性の組織です。
➁関節包
関節唇とつながるように関節を包んでいるもので筋肉や腱の動きをスムーズにする働きをしています。
関節が外れないように靭帯が関節包を補強しており、肩甲骨の前方に肩甲下筋、上方には棘上筋、後方には棘下筋、小円筋というインナーマッスル(ローテーターカフ)が上腕骨頭を包むように張り付いています。
・肩甲胸郭関節
肩甲骨と胸郭の間にある関節です。他の関節と異なって、肩甲骨と靭帯で固定されているわけではなく、肩甲骨周辺の筋肉によって固定されていて、肩関節の土台となる場所でもあります。
この関節は筋肉や鎖骨を介して連動している為に肩甲骨と肩鎖関節、胸鎖関節は常に連動します。胸郭の背面と肩甲骨前面のそれぞれの骨が対面し、肩甲骨は上腕骨とも連結しているので、肩甲骨の動きに腕の動きも関係しています。
なぜ、肩こりがなくならないのか?
一般的に、肩こりは肩甲骨周囲の筋肉の張りが原因であると考えられています。そのまわりの血流が悪くなることで筋肉の緊張が増してしまい、肩こりの症状が現れます。
姿勢の悪さや運動不足により、肩甲骨周りの筋肉が硬くなっていき、肩甲骨の可動域がだんだん少なくなり肩こりになる場合があります。デスクワークや家事などの姿勢の悪さで、肩甲骨が前面の大きな筋肉に引っ張られて開いてしまうことで、肩が前のめりになる「外転」の状態になりやすくなります。この状態が続くことで周囲の筋肉の血行不良を起こしてしまい、よりいっそう開いてしまうので、いわゆる猫背の状態になり、肩こりを引き起こします。
どうやって肩甲骨を動かす?
よく肩が凝った時などに肩をぐるぐるまわす運動をされている方は多いかと思います。イメージとして単純に肩をぐるぐる回して行うと思いがちですが、実はそうではないのです。
・肩の旋回運動の正しいやり方
足を肩幅に広げて、肩に手を乗せるように構えて、そこから肘で大きく円を書くようにゆっくりと回していきます。
意識するポイントとして、肩甲骨が動いている事、肩甲骨が背中に寄っているという事を確認しながらやりましょう。
回数は15~20回、前回しが終わったら逆回しも行って下さい。朝の時間や日中にしていただくのがベストです。
・壁付き肩甲骨回し
1.肘を真っ直ぐ伸ばした状態で壁に両手を押し付けます
2.その状態のまま肩甲骨を寄せる
3.肩甲骨を広げる
4.上に挙げる
5.下ろしていく
*動作中は終始、壁を押した状態で行って下さい。
・肩甲骨と首のストレッチ
1.椅子に深く座り、左手を腰の後ろに回して椅子の縁を握る
*背中は丸めず、まっすぐ前に向けておきましょう
2.右手は頭のてっぺんを通して、左耳の後ろを掴みます
3.その状態のまま斜め右方向にゆっくりと頭を倒していく
4.ストレッチされているのを感じた位置の場所で、20~30秒キープする
5.ゆっくりと元に戻して、逆方向も同様に行います。
このストレッチは肩甲骨から首にかけての筋肉(僧帽筋、肩甲挙筋)を伸ばすストレッチメニューになります。
これらの運動を日々の習慣としていき、肩こりを改善していきましょう!