四十肩・五十肩の治療の際に、整形外科に行かれたことがある方も多いと思います。そして、整形外科の先生から「手術」をした方がいいと言われたことがある人もいてることでしょう。
急に手術と言われても、何をされるかわからないから不安・・。本当に切らないと治らないのか?どんな術式なのかと気になる方に向けて、今回は四十肩・五十肩の手術についてお伝えします。
四十肩・五十肩の手術療法
四十肩・五十肩を改善する為に行う手術の目的ですが、硬くなった関節包(関節を包む組織)を剥がして切離することです。一般的には、「麻酔下徒手的授動術」と「関節鏡視下関節包切離術」が行われることが多いとのことです。
【麻酔下徒手的授動術】
全身麻酔をかけて眠った状態で、医師が肩関節を動かしていきます。このように肩関節に力を加えていく事により硬くなった関節包が伸ばされて切り離す、癒着を剥がすという事を行う術式です。
ただし、やり方によっては関節包が破れてしまい出血するなどして、痛みが余計に強くなってしまうことがあるので注意が必要です。
【関節鏡視下関節包切離術】
関節鏡とは、胃カメラの肩バージョンと思っていただいたら想像がつくと思います。関節鏡を肩関節の中に挿入して、内部を直接観察しながら行う術式です。
皮膚に5ミリほどの穴を開けてカメラを肩関節内に入れることが可能なので、麻酔下徒手的授動術よりも患者さんへの負担が少ないと言われています。
モニターに映し出される肩内部の映像を確認しながら、電気メスを使って関節包の癒着を切り離していきます。このように、関節鏡を用いて肩の可動域を少しずつ広げていくという方法です。
これらの手術で共通している内容で、注意をしていただきたいのは癒着を剥がしたという事であり、筋肉の拘縮はとれてはいません。
そして、関節が元の状態に戻らないようにするためにはリハビリが欠かせません。個人差はありますが、長期的なリハビリとなります。なかには1年以上かかる方もいます。
ただし、四十肩・五十肩のほとんどのケースは筋肉や関節の拘縮を取り除いて、運動療法などをしっかりと継続していくことで治ることが多いです。ここでお伝えした手術が必要となるケースは稀(まれ)であることも覚えておいていただきたいです。
イギリスによる五十肩の研究
この研究によると、病院での治療開始から1年経過して痛みが残っている人の割合、2年経過して痛みが残っている人の割合、3年経過して・・・と長い期間で経過を見ていきました。
200名を超える患者さんについての研究になります。そして、この研究は7年経過した時の数字を出しています。
ここで皆さん、どれくらいの人が痛みを残した状態になっていると思いますか?病院にかかってから7年後の痛みが残っている人の割合です。
なんと、35%の人が何らかの痛みが残っていることがこの研究で分かっています!
これは、数多くの今までに記載されてきた論文の中でも最も多くの患者さんを観察した研究になるので、あてになる数字になるかと思います。
この研究で患者さんがどんな治療を受けたのかと言うと、様々あります。
200名を超える患者さんの割合はと言うと。
95人は何の治療も受けていません(自然経過)
139人はステロイド注射を受けています
10人は麻酔下徒手的授動術を受けています。
20人は麻酔下徒手的授動術と関節鏡の手術を受けています。
このような治療を受けた人と、自然経過の人を集めて解析したところ、全体で35%の人が7年経過したのにも関わらず、何らかの痛みを持っていたという事でした。
そして、麻酔下徒手的授動術を受けた人の長期的の経過を観察した別の論文によると、治療してから平均で9年経過している人のうち、約3割の人は何らかの痛みが残っている(軽い痛みからの人もいれば、中程度、重症の痛みも含む)という報告があります。
実際のところ手術によって動きを取り戻したという人もいてるので、何もかも手術をすることが悪いことではないのですが、手術をする必要がないのにも関わらず進められている方は、一呼吸置いて冷静になって考えてみてはいかがでしょうか?